トランスミッションに異常がある場合の買取査定

トランスミッションに異常がある場合の買取査定

かつてはマニュアルトランスミッション(以下MT)のみしか存在しなかった車のトランスミッション。しかし現在はオートマチックトランスミッション(以下AT)やCVT、DCTなど様々な形態があります。

どれもエンジンの動力を効率よくタイヤに伝える重要な機関であり、車を走らせるうえで絶対に欠かすことができません。それだけにこの部分の故障や不具合は買取査定に大きく影響します。

トランスミッションの不具合や故障によってどのくらい査定に影響するのか?またMTやATの違いによるマイナス査定幅の違いはあるのかなど、気になる点を詳しく紹介していきます。

トランスミッション不具合によるマイナス査定

車のトランスミッションに不具合や故障が合った場合のマイナス査定額について、日本自動車査定協会(JAAI)が指針を公表しています。

減点1点につき1,000円の減額。また車のクラスや登録からの年数によって係数がかかります。車種ごとの詳しいクラス分けは「車買取査定時の車種別クラス分け一覧表」を参照してください。

MTの不具合による減額

まずは最近ほとんど見かけなくなったMTの不具合による減点や減額から。

状態 減点
修理 パッキンまたはオイルシールよりオイル漏れがあるもの 10
シンクロ不良、またはベアリングより異音があるもの FF 80
FR 60

MTは構造が単純ということもあり、本体自体が壊れることは稀。

雑なシフトチェンジによりシンクロに異常が出たり、ベアリング付近から異音が出たりすることが多く、基本はその部分のみの交換になります。

そのためマイナス査定幅が大きくなりがちなトランスミッションの不具合において、MTは比較的傷が浅く済む傾向に。ただし、明らかにミッション本体に異常がある場合は減点もかなり大きなものになります。

ちなみに、フロントエンジン・リアドライブ(FR車)よりフロントエンジン・フロントドライブ(FF車)のほうが減点が大きい理由は、FF車の場合ミッションの脱着に手間がかかるから。車種によってはエンジンを降ろす必要がある場合も。

ATの不具合による減額

次にAT車のミッション不具合による減点や減額についても見ていきます。

状態 減点
修理 パッキンまたはオイルシールよりオイル漏れがあるもの 10
O/H タイムラグ(作動が1秒程度以上のもの) 200
滑り及び不良のもの
トルクコンバーターを含む不良のもの

MTに比べ仕組みが複雑になるATの場合修理費は高くなる傾向に。それだけに買取査定時の減額も大きくなり、オーバーホールが必要なケースだと20万円のマイナス査定に。非常に痛いですね。

ここでは「オーバーホール」と書いていますが、現実的には「乗せ換え」と考えて差し支えありません。比較的簡単に分解して修理できるMTと違い、ATは不具合が出ると中古やリビルド品に乗せ換えることが多いのです。

AT車に乗っていてトランスミッションに何らかの異常を感じている場合、買取査定において大幅な減額になる覚悟をしておいたほうがいいかもしれません。

CVTやDCTならさらにマイナスになる可能性

JAAIの買取の指針ではMT車とAT車についてしか言及されていません。しかし現在の日本車は軽自動車やコンパクトカーを中心にATより無段変速機(CVT)が主流になっている現実が。

また、一部のスポーツ走行に力を入れている車種にはデュアルクラッチ・トランスミッション(DCT)が使用されることも。これは高性能な2ペダルのMTという感覚に近いでしょうか。

CVTやDCTはオートマチック車限定の免許でも乗ることができるため、前述のAT車不具合の査定基準にCVTやDCTも含まれているのかもしれません。

しかし現実問題としてATよりCVTの修理費の方が高額になる傾向にあり、DCTはさらに高いのが実情。つまりこれらに不具合がある場合はマイナス20万円では済まない可能性があるのです。

CVTはAT以上に修理が難しいため、基本は載せ替え。当然費用は高額になることからマイナス査定幅も必然的に大きくなります。

加えてCVTは比較的新しい機構であるため、ATに比べ壊れやすいという特徴も。昔に比べれば丈夫になったといわれていますが、これから車を購入する場合はそういった点も考慮して選んだ方がいいかも。

それ以上に修理費が高額なのがDCT。交換ともなると50万円は覚悟しておく必要があるパーツだけに、ここに不具合がある場合の買取査定では30万円以上のマイナス査定は覚悟しておく必要があるでしょう。

また、DCTは欧州車に多いという特徴が。減点の係数が大きくなりがちな輸入車とあって、減額は予想以上に大きくなる可能性があります。

クラッチ不具合の査定に与える影響

クラッチに異常がある場合の買取査定

クラッチというのはエンジンの動力をミッションからタイヤに伝えたり、ギアチェンジの際にトランスミッション負担をなくすために動力から切り離す重要な装置です。

MT車であればクラッチペダルを自分で操作する必要があるため嫌でも存在を認識することでしょう。しかしAT車であってもギアチェンジの際には車側がクラッチの操作を行っています。

そんなクラッチ、MTであろうがATであろうが走行している以上徐々にすり減っていくことに。しかしATの場合前述オーバーホールに含まれているため、ここではMT車のクラッチに不具合がある場合の減点について言及します。

状態 減点
修理 各シリンダ系統のオイル漏れのあるもの 10
切れ不良、滑り、ベアリング異音 FF 80
FR 60

買取査定の段階でMT車のクラッチがすり減り切れが悪い、滑っている場合はクラッチ交換の必要性が発生し、FF車では8万円、FR車では6万円の減額になります。

MT車のクラッチ交換は決して珍しくはない一方で、トランスミッションを降ろして作業する必要があるため、クラッチに不具合がある場合は数万円の査定減額を想定しておいた方がいいでしょう。

売る前に修理しておくべき?

トランスミッションやクラッチなどに不具合や故障があると買取査定の際に大幅な減額になりがち。それだけに「売る前に修理したほうがいいのではないか」と考える人もいるのではないでしょうか。

結論から言うと売却前の修理は絶対に避けるべき

例えば近々売る予定の車のATが調子悪いとします。その場合マイナス査定額20万円が見込まれる。だからといって整備工場やディーラーで修理したらその費用は20万円では済まない可能性大。

買取業者というのは自社で整備工場を持っていたり、外部の工場に安価で修理してもらえたりする環境が整っています。同じ修理を行うにしても私達個人のユーザーとはかかる費用が全く違うのです。

近々売ろうと考えている愛車のトランスミッションに何らかの異常がある場合、ある程度の減額は覚悟してもそのまま買取査定に出した方がトータル的に損失を抑えられると覚えておいてください。

まとめ

エンジンに次ぐ重要機関であり、かつ高額なトランスミッション。それだけにここに異常や不具合があると買取査定時に大きなマイナスになってしまいます。

最も故障が少なく、かつ万が一の際に修理費や減額が少なく済むのはMTながら、今のご時世新車販売の約98%はCVTやDCTを含むATが占めています。それだけに故障の際の減額は大きくなりがち。

すでにトランスミッションに異常や違和感があるのであれば手遅れですが、そういった症状がないようであれば将来の売却に向けてミッションに負担のない乗り方やこまめなメンテナンスを心がけたいところ。

もし現在トランスミッションに不具合がある場合、売却する前に直しておこうとは考えないようにしてください。かえって高くついてしまいます。

そもそも、ちょっとした不具合であれば査定士がそれを認識できずマイナス査定にならない可能性もあります。ダメ元で複数の買取業者に査定してもらえば見逃してくれる業者も出てくるかも。

JAAIにより減点の指針が示されているとはいえ、ミッションの不具合に対する減額に関しても業者ごとに違ってきます。

買取業者により車自体の評価も異なってくることを含め、一括査定を上手に活用し複数の買取業者に査定してもらうようにしましょう。

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