ドライブシャフトブーツ破れの査定への影響
日本において2年(新車時は3年)に1回必ず通す必要がある車検。現実問題として車検においてチェックされる箇所というのはそれほど多くはなく、多少の不具合があっても思いのほか簡単に通過してしまうもの。
そんな中において異常があると絶対に落とされてしまう箇所があります。それがドライブシャフトやプロペラシャフトのブーツ。このブーツが破れていると車検を通すことができないのです。
それだけにここに異常があると車の買取査定にも悪影響を及ぼします。
ブーツ破れはもちろんプロペラシャフトやドライブシャフトの修理が必要になる場合、どの程度の減額になってしまうのか?修理してから査定に出した方がいいのかなど気になる点を解説します。
ドライブシャフトとプロペラシャフトって何ぞや?
ドライブシャフトやプロペラシャフトの故障や異常が査定のどの程度影響するか触れる前に、まずはドライブシャフトとプロペラシャフトがどの部位を指すのかについて簡単に説明しておきます。
具体的な部位は下記の通り。下図は4WDの例。
ドライブシャフトはタイヤを駆動するためのシャフト、プロペラシャフトはエンジンの動力を駆動輪に伝えるためのシャフトということになります。
そのため、FF車(フロントエンジン・フロントドライブ)の場合動力となるエンジンがフロントにあり、かつ駆動輪もフロントであるためプロペラシャフトやリアのドライブシャフトは存在しません。
一方FR車(フロントエンジン・リアドライブ)はフロントにあるエンジンの動力をリアのタイヤに伝える必要があるため車体の縦方向にプロペラシャフトが存在。フロントは駆動しないため当然ながらドライブシャフトはリアのみです。
つまり、4輪すべてにドライブシャフトがあり、かつプロペラシャフトも存在する車は4WD(AWD)のみということに。それだけにブーツ破れや故障のリスクが高まるという考え方も。
余談になりますが、一般的にブーツが存在するのはドライブシャフトのみ。プロペラシャフトにブーツが存在するのはスズキのジムニーやエブリィなどごく限られた車種のみとなっています。
ドライブシャフトなどの異常による査定への影響
ではドライブシャフトやプロペラシャフトなどジョイント部分の故障によって査定額がどのくらい減額されてしまうのかを見てみます。
査定区分 | 減点の区分及び細則 | 減点 |
---|---|---|
基本 | 作動が正常で、異音がないもの | ― |
修理 | プロペラシャフトの異音及びガタ | 20 |
ドライブシャフトのブーツ交換(ジョイント含む)(1ヵ所) | 30 | |
交換 | ドライブシャフトAssy(ブーツ含む) | FF 50 |
プロペラシャフトの異音やガタであればジョイント部分の交換などで済む場合が多いため減点は20点(20,000円減額)で収まっています。一方で車検に大きく関わるブーツの交換は30点減点(30,000円減額)とやや大きなものに。
ドライブシャフト自体を交換となれば50点減点。
つまりシャフト周りに何らかの異常がある場合、買取査定において2~5万円くらいのマイナスになると思っておけば間違いないでしょう。
ブーツ破れを修理してから査定してもらった方がいい?
買取査定時に何らかの異常や不具合により減額される場合において、その不具合を自分でディーラーや修理工場に持ち込み修理する費用より査定の減額幅の方が小さいのが一般的。
例えば車の凹みを修理するために自分で板金屋などに持ち込めば10万円かかるところも、そのまま車買取業者に査定を依頼すれば5万円の減額で済む…といった感じになります。
つまり、傷や不具合は自分で修理せずそのままの状態で買取に出すのが最も損をしない方法というのが半ば常識化しているのです。
ならばドライブシャフトのブーツやドライブシャフト自体の不具合においても同様だろう…と考えがちですよね。しかしこれに関しては必ずしもそうではないというのが実情。
前述の表を見てもらうと分かるように、ジョイント部分を含むブーツ交換で3万円の減額、ドライブシャフトAssyへの交換となると5万円の減額になってしまいます。
しかし、街の整備工場などでリビルド品や中古のドライブシャフトに交換してもらう際の費用はおよそ2~3万円。ブーツのみの交換であれば1万円前後で行うことができます。ただしこれは「分割式のブーツで修理できる車種なら」という前提になりますが。
そう、つまりドライブシャフト関連の不具合に関しては自分で修理してから買取査定に臨んだ方がプラスになるケースも十分考えられるのです。
もちろん査定が付かないような低年式車や程度が悪い車であればこんなことをしても無駄。しかし100万円以上の買取額が見込めるような高年式車や人気車であればドライブシャフト関連の修理をするメリットも。
ただし、新品を使ったり高いリビルド品を使ったりすることで修理費が高くつきがちなディーラーでの修理はダメですよ。あくまでも“格安”でブーツ交換やAssy交換をしてもらうことが前提になります。
様々なネットショップにおいて交換が容易な分割式のブーツが3,000~5,000円くらいで販売されているため、これを買って自分で交換してしまうのも手。動画を見ながら作業すれば失敗するリスクを大幅に減らすことができるでしょう。
とはいえ分割式のブーツの交換工賃は5,000円程度が相場。これを節約するためにリスクを冒してまで自分で交換する必要があるのかどうかは判断に迷うところでもあります。
ブーツ破れの放置はさらなる故障を引き起こす
修理工場によっては格安にてブーツ交換やドライブシャフト交換を行ってくれるため、場合によっては査定前に修理したほうがトータル的に得をするケースがあるのは事実であるものの、修理に出したり価格を確認したりする作業って正直面倒。
そのためドライブシャフトやプロペラシャフトにブーツ破れや何らかの不具合があっても「そのまま査定に出せばいいや」と考える人も多いことでしょう。しかしドライブシャフトのブーツ破れを放置していると症状が深刻化するケースも。
ドライブシャフトのブーツは中にグリス(潤滑油)が封入してあります。それによってジョイント部分の動きを滑らかにすると共に、異物の混入による不具合をシャットダウンする意味合いもあるのです。
そんなブーツが破れてしまうと、中のグリスが遠心力によって吹き飛んでしまい動きが悪くなったりガタの原因になったりするうえ、砂利や水などが内部に入り込みジョイント部分に悪影響を及ぼしはじめます。
それが長期間にわたるとジョイント部やドライブシャフト本体にダメージを与え、修理費はもちろん買取査定時の減点や減額も大きくなってしまいがち。
すぐに手放すというのであればそのまま乗り続けても問題が起きる可能性は低いでしょうが、まだ数ヶ月以上乗り続けるというのであれば、精神衛生上という観点からも安い修理工場などでブーツを交換したほうがいいでしょう。
1万円程度で交換できるようであれば査定時のマイナス分を補って余りある。ドライブシャフトのブーツ破れに気付いた際は、売却がよほど間近に迫っている状況以外は修理しておいた方が無難といえます。
買取査定前にブーツのチェックを
ブーツに破れがあると車検に通らないこともあって買取査定時には必ずチェックされる場所でもあります。
それが自分で修理に出す際の修理費より査定の減額幅の方が小さいケースであればそのまま買い取ってもらうのがベストとなります。しかしドライブシャフトのブーツの場合車種や修理工場によっては自分で修理に出す方がお得になる場合も。
そのため買取や下取りを考えているようであれば、一度下回りを覗き込んでブーツに破れがないかチェックしておくべきでしょう。
FF車であれば前輪ドライブシャフトのタイヤ側と車体側に2個ずつ、左右計4個。FR車は後輪のドライブシャフトに左右計4個。4WDの車であれば前後輪に計8個ということになります。
スズキのジムニーとエブリィはプロペラシャフトにもブーツが存在するため、当該車種はそちらもチェックしておきましょう。
車体にそれなりの価値が残っていて、かつ分割式のブーツに交換するのであれば、ブーツ破れに対する減額より自分で修理に出す方がお得になる場合も。
ただし、その額は決して大きいものではなく、しかも査定する業者や車種、年式などによってブーツ破れに対する減額幅は異なるため、自分で修理に出すのは不確実な要素が多いのも確か。
とりあえず査定し、その際に査定士にブーツの破れでどの程度減額されているのか聞いてみるのがベストかもしれません。減額幅が大きいようであれば一度断ってすぐに修理に出すという選択肢もありますからね。
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